ばにらんぶん

読んだまんがの感想を800字以内で書いています。

感想:ゾクゾクするまんが『コールドゲーム』(本日5巻発売)

今回は少女マンガの感想です。

「少女マンガ」ですが、惚れた腫れたに終始するような生ぬるい恋愛ものではありません。強烈な印象の作品です。

 たまたま感想の下書きをしていたところ、今日新刊が出ていました!なんか運がいいかも??

 

作品情報

著者: 和泉かねよし

出版: 小学館

レーベル: フラワーコミックス

 

ざっくり内容

西洋中世に似ている国々が舞台。主人公の王女は詳細のわからない他国へ王妃として嫁入りすることを命じられ、伴の侍女と二人きりで王宮へ。途中で侍女と入れ替わり女騎士として行動し、母国へ帰る方法を模索しようとする主人公たち。ところが、すでに「王妃候補」が5人いてその座を巡り女同士の生き残りをかけた戦いが繰り広げられていた…。

 

ここがスゴイ

この作品では国名が「B国」「E国」と完全に記号になっています。そのため色気は全くありませんが、脳の余計なリソースを割かずに国同士の関係を把握することが可能です。なかなかできない設定ですよね。

政治権力のための戦いでもあるので、キャラクターによってはなりふり構わず謀略をしかけてきます。女同士の戦いは控えめに言って壮絶。マジ怖いです。少女マンガだからといって「どうせお花畑の恋愛ものだろう」と舐めてかかると後悔して1日2日寝込むと思います。うかつな対応をしていると足元を掬われて文字通り死にます。

主人公の王女がいた国ではそんなドス黒い世界ではなかったため、彼女の戸惑いと読者の混乱はリンクすると思います。「とんでもないところにきてしまった」と。

もう、引き返せません。(主人公も読者も)

 

 

魅力

ひとそれぞれの欲が描かれていることかな、と思います。

自分にとって大切なことと、自分にとって大切なことが違うように、キャラクターそれぞれが求めるモノが違います。

例えば、ひとこと「地位への欲」といっても、自分自身の個人的な地位が欲しいのか家としての評価なのか、はたまた家族の地位を求めているのか…よく見るとそれらはベクトルが大きく違います。

登場人物一人一人に欲しいものがあり、それを手にするために動きます。物語の中ではキャラクターたちが何のために生きているかがくっきりしていて、鮮烈な輝きがあります。自分に当てはめたときにそこまで「何かのために欲しいもの」ってあるかを省みたときに…さして何もないだけに、その輝きは羨ましくもあります。

 

 

ここまでの全体の感想

母国の国王が「影武者として使え」と主人公である王女と身体的特徴が共通する侍女を手配し、他国へと赴きます。侍女の少女は上級貴族の教育を受けたわけではない、貧乏下級貴族の…むしろちょっと繊細な女の子。高貴な人たちの常識や覚悟はありません。

主人公も侍女の少女も、平和な国で世間知らずとして育っているから「この国は魔界だ」と現地民から言われるような世界に放り込まれては良い身の振り方ができるわけではない。失敗もする。隙も突かれる。なんせ周りは「魔物」と形容されるゲスだらけ。

基本的に強くあろうとする主人公だけど、弱るところも納得しかない。

主人公の一番の目標「生き残って母国へ帰る」というものと、知らんうちに芽生えた「恋」←New!が入り交り、複雑になっていきます。謀略をしかけられるところなどは、怖すぎて生きた読者でありながら心地がしないので、早く完結まで読んで楽になりたいです…。

冗談はさておいて。こういう人間関係のアレって、程度の差はあれ…ミセスのご近所づきあいでもこんな感じがすることもあるなぁ。(女って怖いわね☆)

1巻冒頭、過去の回想という形で物語が始まっていて、決していい未来が待っているわけではなさそうな不穏な空気がずうっと付きまとっています。こわいよぅ…。

そうそう。

時々、思い出したように恋モードが入ってきます。スープに入ったクルトンか、オシャレ料理に乗っかってるサフランくらい?

 

5巻感想

人の考えは、その行動を見ることでしか 推し量ることはできません。

主人公もある人物の考えをその足跡と行動で推し量り、想像することしかできません。読者はどっちの立場からも観測できるのでその想像を確認できるわけですが…。

今回はまた新しい「魔物」についてスポットライトが当てられています。でもその「魔物」、まだまだ隠されてることがありそうで…。

恋の方も意外な展開がありました。でもまぁ…こんな「魔界」では浮ついた気持ちを持ったら負けな気もするから、主人公も読者も気を引き締めて臨んでいかなければいけないなぁという気がします。

 

リンク

 「コールドゲーム」1巻

 

本日発売の5巻

 

次巻予告によると6巻の発売は今年の年末くらいになるみたいです。予告からは混沌の匂いしかしません。